闇に溺れた天使にキスを。




ベッドの上で、こんなことして。
さらに甘い雰囲気が漂う。

角度を変えて重ねられる唇、繰り返されるキスは私の思考を鈍らせようとしてくる。


「……んっ」


案の定、息が苦しくなり、うまく頭が働かなくなる。

いつものようにぎゅっと彼の服を掴むけれど。
今日は和服のため、簡単にそれがずれてしまう。


はだける形になる彼の和服姿が、さらに危険さと色っぽさが露わになっている。

キスが止む一瞬の間でも思わず見惚れてしまい、動けなくなった。


「拒否したのに、抵抗しないのは悪い子だね」

けれど突然、ぐらりと視界が反転した。
背中にはベッドの感触があり、先ほどの体勢に戻ってしまう。


神田くんが覆い被さる、逃げ場のない状況に。


「……っ」

じっと私を見おろす彼の瞳が熱を帯び、少し潤んで見える。


ほんの少しの違いにすぐ気づき、そんな彼をも好きになる。

つまり私は、新しい彼を知るたびにどんどん好きになっていく。それは止まることを知らない。


「白野さんの頭の中、全部俺で埋まって」

妖艶に笑う彼。

胸元がはだけており、そこから見え隠れするのは鳳凰の和彫り。


“愛と幸福”
神田くんのお母さんが望んだもの。

ねぇ、神田くんはとっても愛されてるんだよ。
神田くんのお母さんに、お父さんに。

涼雅くんだって、神田くんを大事に思っている。


けれど私は欲張りだから。
“愛し愛される心と幸福が神田くんに訪れるように”

その相手に私がなりたいと思った。