闇に溺れた天使にキスを。




「本当に?」

宮橋先生のような美女を目の前にして、神田くんは本当に何も思わなかったのだろうか。


「疑うの?」

「だって、神田くんだったら絶対綺麗な人がたくさん寄ってきて……欲情、しないのかなって……」


自分で言っておきながら、すごく小さい人間に思えて嫌になる。

私はいったい彼に何と言って欲しいのだろう。
認められたらショックを受けて落ち込むくせに。


「あー、それ、白野さんが言う?」
「へ……」


意味深な回答に、一瞬ヒヤリとした。
もしかしたら本当に神田くんは───


「今、欲情してる」

想像とは違う返答に一瞬理解が遅れる。
私の質問を無視するような答え。


神田くんは、今……今───


「……っ!?」

ボンと爆発して、顔から熱が噴き出たかのように、尋常じゃないくらい熱くなる顔。


「そ、んな嘘……」


慌てて言葉を探す。
落ち着け私、とりあえず照れてしまえば負けだ。

主導権が神田くんにいってしまう。


「だって神田くん、よく宮橋先生と会ってる…学校でも学校外でも」


話を慌てて戻すけれど、それはまた自分を不安にさせることで。

自分でもバカだなと思った。


「あれは任務関係のことだから何もない、けど……そうか、それが白野さんを不安にさせているんだね」


けれど神田くんは少し考え込むような動作に入り。


「……よし、決めた。これから女が絡む任務は全部涼雅に任せよう。華さんと恋人のフリしたり報告するのも全部。

それなら華さんとの関わりはなくなるだろうし、白野さんを不安にさせない」


なぜか嬉しそうに話す神田くん。