闇に溺れた天使にキスを。




「あの、ね…」


恐る恐る口を開く。

もしそれで認められてしまえば、私はどうすればいいのかわからないから。


きっと相当なショックでは済まされない気がする。
けれど神田くんは何も言わず、ただじっと私を見つめていて。


「……私は、神田くんの何番目…?」


緊張のあまり、大事な部分をはしょって話してしまった。


「何番目?一番以外に何があるの?」

「ち、違うの……神田くん、あのね、たくさんの女の人と関係持っていたって本当……?」


信じたくない。
宮橋先生の言葉が本当だなんて。

嘘だって言ってほしいけれど。


「……うん、本当だよ」


彼は認めてしまう。
ためらいもなく簡単に。

途端に悲しくなって、気づけば目に涙が浮かぶ。


「じゃ、宮橋先生とも…?」

お互い好きじゃなくても、きっと神田くんなら私に触れる時と同じように、宮橋先生にも優しく触れているだろう。

そう思うと苦しくて、ついには涙が溢れてしまう。


「泣かないで」

涙を優しく拭ってくれる彼だけれど、止まらない。
面倒くさい女だと思われるかもしれないのに。


「……っ、ダメだ」
「へ……」

すると彼は、一度起き上がると同時に私の体を起こした。
かと思えばぎゅっと抱きしめられる。


「ごめん、俺…好きな子を前にすると、どうすればいいのかわからなくなる」

彼に包まれる中、ぽろっと小さく呟いて。
好きな子…は、私のことでいいの?


「不謹慎だろうけど、今の白野さん見て嬉しいと思ってるくらいだから」


嬉しい……?

この状況で何が嬉しいのかわからなくて、素直に戸惑ってしまう私に対し、彼は私を抱きしめたままで。