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その扉をノックして、ゆっくりと開けた。
神田くんの部屋がある二階は比較的洋風な造りで。
一階とは違い襖ではなく扉で、廊下もタイル式だった。
組長との話を終えたあと、私は神田くんに会うために彼の部屋に向かい。
少し緊張してしまい、ドアノブを握る手に力が入った。
「……白野さん」
神田くんを視界に捉えた時にはもう、彼はこちらを向いていて。
目は仔犬のようにキラキラと輝いているようにも見える。
不覚にもキュンとしてしまい、かわいいと思ってしまう。
今はそれどころじゃないというのに。
「良かった…何もされてない?」
「何もされてないよ」
実の父である組長を疑う神田くん。
きっと私が一度、泣きかけてしまったからだろう。
本当に何もされていないため、首を横に振り大丈夫だと意思表示をした。
それにしても───
先ほどの黒いシャツを見にまとった姿といい、今の紺色の和服を着た姿といい。
同い年には思えず、大人の色気すら感じられた。
さらには神田くんに紺色の和服がとても似合っており、思わず見惚れてしまう。
「……白野さん?」
名前を呼ばれ、はっと我に返る。
きっと名前を呼ばれるまで私は神田くんの虜になっていたことだろう。
それが恥ずかしくてたまらない。
やっぱり私は神田くんに感情を大きく左右される。
「か、んだくん…いつもと雰囲気違うね」
「雰囲気?」
「ほら、いつも制服姿だからさわやかな高校生って感じがするけど、今はなんか大人っぽくて色気がすご…い……」
焦ってしまった私は、勢いで彼にとんでもないことを言ってしまった。



