「だから俺は拓哉に“普通の人間”の生活を送って欲しかったから、頭のいい真面目な高校に行かせる中で、仲間意識を高められるよう“暴走族”の総長をやらせている。
そんな中……拓哉は君に出会ったんだ。
本当に君には頭が上がらない」
ありがとうと言われ、頭を下げられたから慌ててしまう私。
「や、やめてください…そんな、私は何も…」
ただ神田くんに惹かれ、踏み込んでしまっただけ。
彼を纏う深い闇に手を伸ばしてしまっただけで───
「君に出会って拓哉は昔の自分に戻りつつある。あの妻に似た笑顔を見た時、本当に嬉しくて泣きそうになったよ。
その時拓哉は君の話をしていた。
君の存在がそれほどに大きいようだ」
目を細めて笑う組長は“親の顔”をしていて。
神田くんのことを大切に思っているのが痛いほど伝わった。
「こんな危険なところに君を巻き込んでしまって申し訳ないが、俺たちが責任を持って君を守る。だからどうか、拓哉のそばにいてやってくれないか?」
頼まれる形になったけれど、私のほうこそお願いしたいと思った。
もし許されるのなら、私は───
「そばに、いたい……私、神田くんのそばにいたいです」
ここから先は怖い世界。
彼のそばにいることは、命に危険が及ぶことだってある。
それでも私は神田くんのそばにいたいと思ってしまうほど、心が完全に奪われていた。
こんな気持ち、初めてで。
隠すことも押し殺すこともできないと思った。



