闇に溺れた天使にキスを。




「わかった。
じゃあせめて、白野さんのその格好はやめさせるから」

「……え?」


その格好、とは今の服装のことだろうか。
着替えなければならないほど、この服装はダメらしい。


「……涼雅」
「はいはい、拓哉が今欲しいのはこれだろ?」

いつからいたのだろうか。

襖で隠れいた場所から涼雅くんが出てきたかと思うと、神田くんに何やら手渡した。


それは黒いスーツの上着のようなもので。
もしかしたら神田くんが着ていたものかもしれない、なんて。


「さすが涼雅、ありがとう。
じゃあこれを…」

そしたら突然、神田くんにその上着をそっとかけられた。


「よし、これで肩まで隠れた」

神田くんに言われた通り、上着をかけられたことによって、大胆に出ていた肩が隠れてくれた。


「絶対に俺の部屋に来るまで脱いだらダメだからね。
暑くても我慢するんだよ?」

「う、うん……」


なぜかはわからなかったけれど、神田くんの言葉に数回頷く。

すると神田くんは安心したように笑い、最後に私の頭に手を置いてその場から去った。


どうやら部屋に戻ったらしい。


神田くんが居間を後にすると、再び襖が閉められた。
そして組長とふたりになる。

さっきのことが思い出され、一瞬怯えてしまったけれど。


もう最初のような威圧が、ふたりになった今でも感じられずに安心した。


「さっきは本当に怖がらせて悪かったね」

また同じようにテーブルを挟んで向かい合う、私と組長。



「……あ、私のほうこそすいません、いきなりあんな泣き出してしまって…」


本当は我慢するべきなのだろうけれど、耐えきれなかったのだ。