闇に溺れた天使にキスを。




「怖がらせてしまって悪かったね、白野未央さん。
まさか泣き出すとは思わなかったよ」


にこにこと笑う組長に、どう反応すればいいのかわからなくて戸惑ってしまう。

どれが本当の姿なのだろうかと。


「……“父さん”、お願いだから白野さんを怖がらせたり泣かせたりしないで」


すると今度は神田くんも、柔らかな口調へと変わる。

さらには“組長”と呼んでいたのに、“父さん”へと呼び方が変わった。


「悪かったよ。いやぁ、それにしても本当にかわいかったな。ペットにしたい」

「ペット……!?」

やっぱりどこか楽しそうに話す組長。


「それはわかるかもしれない。首輪をつけて、部屋の中に閉じ込めたい」

「……っ!?」


さらには神田くんも同意してしまい。
これが親子なのだろうかと思った。

考え方が似ているのかもしれない。


「確かに首輪つけて閉じ込めないと、その子すぐ他の男になびくからな」

「な、なびきません…!」


思わず組長の言葉を否定するようにして言い返してしまうけれど。

恐怖心はもう完全に薄れていたため、緊張することはなかった。


「でもなぁ、他の男の前でもそんな格好するし。
……あっ、そういえば拓哉、華の件はまだ解決していないのか?」


するとここで、自然と宮橋先生の名前を出す組長。


「いや、ちゃんと華さんに話したつもりだけど…どうやら、わかってもらえてないみたいだね」


神田くんは少し私と距離を開け、じっと見つめられる。

かと思えば彼の指が私の頬を撫で、優しく微笑まれたから私も微笑み返した。