「そんな、つもりは…」
「普通に考えたらわかるだろう?」
本当にそんなつもりはなかったため、急いで誤解を解こうとしてもそれを制されてしまう。
逆らえない。
目の前の相手に、抵抗することさえできなくて。
「もし誘うつもりじゃなかったのなら……おそらくそれは、“華”の仕業だろうね」
目を見張り、息ができなくなる。
先ほどから緊張で心臓がうるさく鳴る。
宮橋先生の名前が出てきて、驚くことしかできない。
「どうだ?合っているだろう?」
自信ありげに笑われたけれど、否定するしかないと思った。
ここで認めてしまえば、宮橋先生が危険に陥るような気がして。
それに私は約束したのだ、絶対に言わないと。
これは宮橋先生の株が落ちるだけじゃ決して済まないと思ったから、私は小さく首を横に振る。
「ち、違います……私が、勝手にこんな格好して…」
「本当のことを言わなければ、華ではなく自分が危険な目に遭うとわかっているのかな?」
ゾクッとした。
威圧が感じられるその表情に。
組長は本気でそう言っているけれど。
「……っ、本当に、宮橋先生じゃない、です」
涙がじわりと目に浮かぶ。
私が我慢をすればいいのだ。
そうすれば終わる話。
だって宮橋先生は、家族全員が神田組に仕えていると言っていた。
つまり、連帯責任となれば宮橋先生以外にも被害が及ぶ恐れだってある。
「そうか。君はその選択を取るんだね。
それなら君の望む通り……」
涙が目からこぼれ落ちそうとした、その時。
襖が誰かによって開けられた。



