その時、眼帯をした男の人と目が合ってしまった。
鋭い目つきに思わず怯みそうになる。
「あなたが白野さんですね」
けれど男の人はすぐ目を細め、優しく微笑んだ。
途端に肩の力が抜ける。
「は、はい…」
「これからもどうかよろしくお願い致します」
なぜか頭を下げられるから驚いたけれど、恐らく礼儀としてだろうと思い、私も頭を下げた。
「よ、よろしくお願いします…!」
「……何してんだお前、行くぞ」
「へ…」
涼雅くんの言葉に思わず顔を上げると、彼は呆れた顔をし、さらには男の人ふたりも戸惑うような表情をしていた。
何かやらかしてしまったのかと心配になりながら、また足を進める涼雅くんの後ろをついていく。
「お前が頭下げる必要ねぇよ」
「……どうして?」
頭を下げられたら普通、私も下げて当然だろうと思った。
「なんでってお前…若頭である拓哉の女なんだぞ?
ここでは相当偉い立場。お前がへこへこする必要ねぇ」
神田くんの女。
その言葉でズキンと胸が痛んだ。
宮橋先生の言葉が思い出されて、苦しい。
「私は、神田くんの女じゃない…」
きっとそう。
ただの遊び相手なのだと。
「は?お前、ここに来て何言ってんだ」
「だって私はっ……」
神田くんにとってもう何番目かわからない女、なんでしょう?
神田くんにとったら、“また新しくできた女”なのだ。
私は特別に思っていても、彼は違う。
「……なんかすっげぇ勘違いしてるけど大丈夫か?また泣きそうなってるし。これから組長に会うんだからその顔やめろ」
マイナス思考が止まらないでいると、涼雅くんに軽くチョップを食らわされる。



