すると神田くんは満足そうに笑った。


「華さんとは組絡みの付き合いだよ。
華さんの家族も全員、神田組に仕えてくれている」


ようやく聞けたふたりの関係。

組絡みの付き合いとは想像すらしておらず、素直に驚いたけれど。


恋人のような関係ではないようで、ほっと胸をなでおろす。


「だからこの高校に華さんがいるのも偶然じゃなくて必然なんだよ。そのほうが都合、いいから」

「……そう、なんだ…」


もしかしたら宮橋先生はわざと養護教諭を選んだのかなと思ったり思わなかったり。

だって養護教諭だと、保健室にいるのが普通だ。


そのため、生徒とふたりで会うのも容易だろう…だなんて、深読みのしすぎだ。


「ねぇ、白野さん」
「は、はい…!」


考え事をしていたら突然名前を呼ばれたため、変に慌ててしまう私。


「そんな慌てなくていいよ」
「あ、いや……」

神田くんにもそれがバレたようで、落ち着かせるような言葉をかけられたため、恥ずかしくて少しだけ俯く。



「あのさ…普通に俺、期待してもいい?」
「……へ?」


少しの沈黙が流れた後。
神田くんがゆっくりと口を開いた。

期待…それは、何に対しての期待だろうか。


言葉の意味が理解できなくて、聞き返そうとしたけれど───


今度は神田くんのスマホが鳴り、また会話が遮られてしまう。

どうやら誰かから電話がきた様子で。


『ごめんね』と一度謝られてから、彼はスマホを自分の耳に当てて電話をとった。


「……もしもし」

電話の相手はわからなかったけれど、いつもの穏やかな口調で話す彼。


「ちょうどよかった。俺も涼雅にその件で電話しようと思っていたから」


そんな中、神田くんの口から涼雅くんの名前が出てきて。
電話相手が涼雅くんだということがわかった。