「昨日はある任務があって、華さんと一緒にパーティに参加したんだ。でも途中で怪しまれたから帰ることにしたら尾行されて、結局車に乗って逃げたって話。

まあ証拠はいくつか掴めたから良かったんだけどね」


現実味のない話。
私には考えられないことで、彼が遠くに感じられる。


「それがどうしたの?」


このまま、何事もなかったかのように話を終わらせようと思っていたけれど。

彼に聞かれたくない質問をされてしまう。


「あ、えっと……気になって」
「何が気になったの?」

抽象的な言葉を使い乗り切ろうとしても、彼がそれを許してくれない。


「言えない…」

面倒くさい女だって思われてしまう。
それが怖いから本当のことを言えない。


「俺と白野さんはもうただのクラスメイトじゃなくて恋人同士なんだよ。それなのに隠し事するの?」


優しく、刺激しないように。
私が本音を言える状況へと誘導する彼。


「だって、面倒くさい女だって思われるのやだよ……」

そんな彼に誘われるようにして、本音をぽつりとこぼす。


「面倒くさいなんて絶対に思わないよ。
だから俺に話して、白野さんの本音全部」


泣きそうになる子供を慰めるように、彼が私の頭をぽんぽんして。

それが余計に涙を誘う。


「……っ、宮橋先生とは、どういう関係なの……?」

ここまできたらもう、隠し抜くことなんてできない。
ようやく昨日から不安に思っていたことを彼に聞く。