机を挟んで座る彼が近づいてきた。
腕を置き、前重心へと変わる。

キスされるのだと。
彼が何も言わなくてもわかった。


今までのキスはメガネを取っていたはずの彼が、今日は外す動作もせず。

余裕がないのが伝わってくる。


だからこそ危険さが増していた。
そう、きっと目の前の彼は───

理性を欠いていると。


いつもより強引に塞がれる唇。

深く、きつく。
その形を確かめるようにして。


こんなキス、初めて。
全部全部、私の知らないことを彼から与えられる。

全身に熱がまわり、体が火照る。


目を閉じてそれを受け入れ、ただ彼に任せていた。



これが流されている、ということかもしれないけれど。
いっそのことこのまま流されてもいいと思った。

もちろん、神田くん限定で。


「……っ、邪魔」


かけているメガネが邪魔だったらしく、少し雑にとったかと思えば。

また私の唇を奪われる。


てっきり一度で終わると思っていた私は、確実に油断しており。

思わず彼のシャツを掴んでしまった。


「……ん」

なかなか離してくれようとしない彼は、角度を変えてキスを繰り返してくる。


苦しいはずなのに、その甘さに酔いしれそうだ。