「怖い?どうして?」
「涼雅から、色々聞いたんだよね?」
どきりとした。
確かに私は、神田くんのことを涼雅くんから聞いた。
「うん、聞いた…けど」
「俺が怖くないの?涼雅の言葉は全部本当なんだよ?
父さんが組長で、俺が若頭。組長を継ぐことも決まってる。
それから感情のない人間。
だから俺はきっと、人間なんかじゃないんだよ」
声音はまったく変わっておらず、優しくて穏やかなものだったけれど。
今の神田くんは、どこか儚げで、苦しそうで。
必死になっているようにも見えた。
「神田くんは人だよ。ちゃんと心を持った、優しい人。私が証明する。だからそこまで必死にならないで」
どうしてそこまで必死になるのだろう。
もしかして、何か理由がある───?
「……っ、白野さん、お願いだから俺を惑わさないで。
本気で危ないから」
神田くんの声に余裕がなくなる。
珍しい、もしかしたら初めて見るかもしれない。
「危ない、の?」
「ダメだってわかっていても、白野さんを危険に晒してまでそばに置きたくなる」
神田くんと視線が交じり合えば、もうそらせないほどの野生的な瞳に捕らえられてしまい。
「……もう、いいや」
「へ……」
「もう全部、どうでもいいから俺のものになってよ。
責任はとるから」
投げやりで強引な物言いが、危険さを漂わせているというのに。