闇に溺れた天使にキスを。




「ぜひ、それでお願いします…」

「敬語が嫌だって変な女だな」
「おい俊斗、敬語やめるのと失礼なこと言うのは別だからな」

「あ、いや、気にしないでください」


私に対して言葉を選ぶだなんて、そんなの申し訳ない。


「でもあんたは総長の女になる予定だろ?」
「……え、私が?」


私が神田くんの彼女になる予定?

「違うのか?」
「違います。誰が、そんなこと…」

「嘘つくなよ。総長も副総長も言ってたからな!」


戸惑う私に優しく話してくれる平沢先輩に対し、足立先輩は勢いを残したまま間に入ってきた。

そのため、さらに混乱してしまう。


神田くんだけでなく、涼雅くんまで?
いったいどうなっているのだろう。


「そうとなれば狙われてるんだな」
「狙われてる…?」

「ああ。あんたのこと、総長も副総長も相当気に入ってるみたいだ。だから総長の女にしたいんだろう」


私を神田くんの彼女にしたい…?

そんなの信じられなくて、なかなか受け入れられない。
もし本当だとしたら、朝の言葉も嘘じゃないということ?

神田くんは、本当に私と付き合いたいと───


「ふたりとも、白野さんに話しすぎです」


その時。
落ち着いた、優しい声音が後ろから聞こえてきて。

振り向くとそこには神田くんの姿があった。