闇に溺れた天使にキスを。







ずっと朝のことが気にかかっていて、あまり授業に集中できなかった。

私は神田くんのことを、どう思っているのか。


何度考えようが同じ。
答えなどまったく出てこない。

そもそも、恋がどういうものかすら知らない。


気づけば放課後になっており、あっという間にクラスのみんなが帰っていった。

まだ数人が教室に残っている中、神田くんが先に教室を後する。


『続きは放課後』


あの言葉が頭の中で繰り返される。
私は何を期待しているのだろう。

恥ずかしくなり、首を何度か横に振る。
落ち着け自分。


今日は神田くんが休んでいた分のノートを見せるだけ。
彼は私のノートを写すだけ。

それ以外のことは何もないと、自分に言い聞かせる。


一度鞄を開け、ひと通りのノートがあるのか確認する。

いつもより重い鞄の中には、今日にない授業のノートもちゃんと入っていた。


「……よし」

あとは空き教室に行くのみ。
意を決して立ち上がり、教室から出る。