“私は神田くんが来なくて寂しい思いをしていた”と、恥ずかしいことを言いかけてしまったから。


「私、は?」
「な、なんでもない…」


首を何度も横に振る。
絶対言えない。恥ずかしくて言えない。

けれどこの反応が彼にとって逆効果だったようで。


「ご褒美くれない理由、教えてくれるんだよね」

いつもの意地悪モード。
声がとても楽しそうだ。


「神田くんが頑張ってたかなんて、私わからないもん」
「自己申告制に変更しよう」

「絶対信じない」

「じゃあ今度は白野さんの番ね。
俺に何か言いたいことある?」


疑問形だけれど、どこか強制にも聞こえるような言い方。


「……ない」
「言えるのは今だけだよ。もうすぐ電車も来ちゃう」
「言わないもん」


私だけが寂しい思いをしていただなんて嫌だ。


「素直に言わないと意地悪するよ。いいの?」


数回、頬をつんつんされる。
その行動が恥ずかしい。