「未央ー、俺の未央」
「お兄ちゃんのものじゃないから離して!」

「嫌だ、未央とラブラブするんだ」
「ここ駅前だからっ…」


先ほどから痛いほど感じる視線に、彼は本当に気づいていないのだろうか。


こんな駅前で、側から見れば抱きしめ合っているように見えるかもしれない状態で。

多くの人が“こんなところで”と、思っていることだろう。


「じゃあ家でラブラブしような。
今日も夜までふたりだから」

「い、嫌だ」

「そんなこと言わないで、未央。
今日は未央の好きなハンバーグにしたから」

「ほ、ほんと…!?」


両親は仕事で夜が遅いため、平日はいつも私とお兄ちゃんが作る時が多い。

交互で作るのが定番になっており、今日はお兄ちゃんが担当の日。


私の大好きなハンバーグを作ってくれたようで、自然と気分が上がる。

なんとも単純な人間だろうか。
わかっているけれど、嬉しいのだから仕方がない。