「破ったら、ただじゃ済まさないよ。
嫌だって言っても、許してあげないかな」


さらっと答える彼。

言っていることは少し怖いのに、優しい口調のため危機感があまりないけれど。


「それでも破りたいと思う?」

少し返答に悩んでしまった。


今日一日で、さらに謎が深まった彼のことを知りたいと思ってしまう自分がいて。

破ってしまえばもっと彼との関わりが増えるんじゃないかって、期待してしまう。


「あれ…白野さんってもしかして、悪い子?」


少しだけ、悪そうにも見えない笑み。
メガネをかけていない彼に、危険さが増すばかり。

シルバーのピアスが目立ち、一瞬彼が“悪い人”だと錯覚してしまうほどだった。


「悪い子には俺、容赦しないからね」

そう言って、私の顎を持ち上げる。
慣れた手つき。

真っ直ぐな瞳が私を捉えた。