「……っ、神田、くん」
慌てて視線を外す。
彼を見つめ返すことなんてできない。
必死の思いで彼の名前を呼ぶ。
すると彼はクスッと笑い、口を開いた。
「今日さ、白野さんにたくさん俺の話したでしょ?
だから全部、口外しないって約束してほしいんだ」
そんなこと言われたって。
今日のことを誰にも言うはずないし、何より誰も信じてくれないだろう。
私が神田くんと話した───
そのことすら、信じてくれないかもしれないのに。
それほど今日の出来事は夢のようで。
「もし、破ったら…?」
胸の高鳴りと、籠る熱のせいで思考が鈍くなり。
素直に頷けばいいものの、この状況が現実だと受け止めきれなくて、焦らすような質問をしてしまった。



