「真面目な話をしときゃいいんだろ?
不安なら盗聴器や監視カメラでもつけとくか?」

「いや、そこまではしないよ。
白野さんの気分を害したくはないから」


気分を害すどうこうよりも、盗聴器や監視カメラという言葉が簡単に出てくることのほうが怖い。


「なら決まりで。白野、準備できたか?」
「あ、うん……じゃあね、か…佐久間くん」


危ない。
最後の最後で呼び間違えそうになった。

そんな私の様子を見て、神田くんが小さく笑いながら私の頭にぽんと優しく手を置いた。


「来週から、必ず学校行くからね」
「うん、待ってる…」

「じゃあ放課後、空き教室でノート見せてもらってもいい?」


“空き教室”
その言葉がどこか危険さを漂わせているように思える。


「いいよ…」

それなのに、受け入れてしまう私も私だ。
嫌じゃないという気持ちのほうが勝っている。


「ありがとう。
その日を楽しみにして頑張るね」

「う、うん…私も、頑張る」


次に神田くんと会える日まで。
不安や寂しさに負けないよう、頑張るんだと心に決めた。