「ほら、拗ねたってどうせかわいいだけなんだから」
「……っ、嘘言わないで」
「嘘じゃないよ。本当のことしか言わない」
「…もう帰る」
「あ、先に行こうとしたらダメだよ」
意地悪な人。
最後の最後まで私を照れさせようとする。
嘘まで言って人の照れ顔が見たいだなんて、神田くんの趣味がそろそろ危うくなってきた。
「ほら、一緒に帰ろうね」
「……おい、佐久間。何お前も行こうとしてんだ?」
神田くんから離れて立ち上がると、彼に一緒に帰ろうと言われ少し期待したのだけれど、涼雅くんがそれを許してくれなくて。
「え?何って…白野さんを送るため」
「バカじゃねぇの?佐久間がいなくなってどうする」
「涼雅がいるから大丈夫だよ」
「冷静に判断を下せる佐久間が一番必要に決まってるだろ?」
どうやら神田くんが、今ここに必要らしい。
それもそうだ。
神田くんがここから離れられないから、私が来たのだ。