「…だってよ。残念だったな。
総長命令は絶対だから」


なんて言う涼雅くんだったけれど、どこか楽しそうに笑っている。


「いつもの……佐久間くんのこと、聞きたい」
「ダメだよ、教えてあげない」


私は聞きたいというのに。
神田くんがそれを許してくれない。


「ケチ」
「こら、そういうこと言わない」

「だって知りたいんだもん」


神田くんのことを、もっと。
知らないことが多すぎる。

彼が暴走族の総長だなんて、考えもしなかった。


確かにあの刺青や怪我を見て、闇で生きる人だとは思っていたけれど───


「……あっ」


その時、思い出した。
そういえば神田くん、頬に怪我をしていた。

怪我というワードで思い出した私は、鞄からポーチを取り出す。


「白野さん、何してるの?」
「ちょっと待ってね」

急いでそのポーチから絆創膏を手に取った。