私を後ろから抱きしめる彼が動いた。
私の顔を覗き込むようにして見てきたのだ。

途端に顔の距離が近くなり、恥ずかしくて俯くけれど。


「意地悪が嫌って言われても直せないな」


ほら、もう今の時点で意地悪だ。


「直してくれないとやだ」
「でも白野さん、嫌がっているように見えない」


神田くんの手が私の顎に添えられて。
嫌な予感がした時にはもう───


「ほら、顔真っ赤」

手遅れだった。


彼が優しい手付きで、私を自分のほうへと向ける。
自然と視線が交わり、さらに恥ずかしさが増していく。


思わずぎゅっと目を瞑るけれど。


「目の前で目を閉じられたら勘違いするよ?
キスしてほしいのかなって」

「……っ」


彼はそれでも許してくれない。
やっぱり嫌だ、恥ずかしい。

顔も熱くなるし、心臓の音がこれでもかってくらいにうるさくなる。