闇に溺れた天使にキスを。




ふたりの関係がわからなくて、もちろん触れることもできないから、電話の様子を見ておくことしかできない。


「はい、そうです。
今から向かうんで、裏門の様子を…」


どうやら彼は、もうすぐ行ってしまうようだ。

さっきまでの甘い時間が嘘のようで、目の前の彼が遠く感じる。


「ではお願いします」


そこでようやく電話を終えた彼は、制服のポケットにスマホを直した。


「白野さん。
俺、用事ができたから行くね」


緊急の用らしく、彼はすぐ私にそう言った。
嫌だなんて言えるはずもなく。


「そっか、わかった。また明日ね」
「……うん、また明日」


少し間が空いた後、彼も同じように返してくれて。
それから頭を数回ぽんぽんされた。

それだけでも、安心感が胸いっぱいに広がる。