「じゃあ、白野さんの体に聞こうかな」
「えっ…」
眼鏡をとる動作をしながら、彼が口を開く。
私の体に、聞く?
少しだけ、嫌な予感がした。
「嫌なら抵抗してね」
絶対に確信犯であろう、その悪そうな笑み。
私が、本当はダメなんかじゃないって見抜いている。
眼鏡をとった彼は、恐らく私に触れる気が満々であろう。
そして、その“触れる”という意味。
私の考えが間違っていなかったら、きっと───
彼の顔が、私に近づく。
それを受け入れるようにして私は目を閉じてしまう。
体に聞くとはこういうこと。
本当にダメなら、私はここで抵抗しなければならないというのに。
そっと、優しく重ねられた唇。
私は今、神田くんとキスをしている。
この前とは違い、しっかりと頭で理解している自分がいた。
それでもなお、抵抗はせずに。
唇から伝わる温もりを受け入れていた。



