「かんだ、く……」
見つめ返せない。
それほどに、目の前にいる彼との距離が近かった。
頬が熱を帯びていく。
「動けない、から…」
私を囲うようにして。
彼が私の行動範囲を狭める。
「そっか」
訴えたつもりなのに、彼はひと言で終わらせてしまう。
離れてくれる気はないらしい。
「神田くん、離れて…」
このままじゃ、胸がドキドキとうるさくて。
壊れてしまいそうだ。
「でも、嫌そうに見えないからなぁ」
「……っ」
ここまで言っても彼は私を攻めてくる。
恥ずかしい思いが増すばかり。
普段は優しいのに。
今の神田くんは意地悪な人。
私の反応を見て楽しむ、悪い人。
「…意地悪」
俯きながら、小さく呟いてみる。
私なりの抵抗。
けれどそれは逆に、彼を大胆にさせてしまう。



