「好き、だよ」


きっと他の子に聞かれたら、嘘でも否定していると思うけれど。

神田くんになら、本当のことを言っても良いかなって思えた。


だって彼は周りの目を気にせず、堂々と本を読んでいる。
だから彼も本が好きなのかなって思ったから。

もしそうだとしたら、彼と共有できる。
それを期待していたのだ。


「やっぱり。
じゃあさ、オススメの本とか教えてよ」

「オススメの、本…」
「うん。白野さんがみんなにも読んでほしいと思う本」


心なしか、神田くんの目が輝いているように見える。


「神田くんも、本が好きなの?」

今は聞かれている側なのに、逆に聞き返してしまう私。
言った直後に後悔したけれど───



「好きでも嫌いでもない、かな」

予想外の返答に驚いてしまった。