「すぐ、行くの…?」


変な言い方をしてしまったと自分でも思う。
これだとまるで、神田くんを引き止めているようだ。

けれど彼は依然として表情を変えない。


その姿に少し安心はしたけれど、逆にどう思われたのか不安で怖くなる。

ああ、やっぱり神田くんの心が読めない。


「白野さんの後だから、終わったらすぐ行こうと思ってたけど……予定変更で」

彼は笑った。
私の手そっと優しく取りながら。


「本当は4時半からだから、それまで一緒に待っててくれる?」

穏やかな口調だったけれど、その言葉に私の鼓動はまた速く鳴り始める。


「あ、あの…」

神田くんに誘われているこの状況が、うまく飲み込めない。

私が引き止めているような言い方をしたから、気を遣っているのかもしれない。


けれどせっかく誘ってくれたのに断ることもできなくて、私は何も返せなくなる。