きみのひだまりになりたい



残りわずかのオレンジジュースを一気に飲み干した。ズズズ、と最後の一滴まで吸い尽くす。口の中にひんやりとした感覚が来なくなった。空っぽになった紙パックはずいぶん軽い。右手で簡単に握りつぶせた。


ぺちゃんこにした紙パックを歯でがっちりくわえ、はしごに両手をかける。ざらざらとした感触を避けることなくのぼっていった。




「よいしょ、っと……」




最上部に手が届いた。ひょっこり顔をのぞかせる。またコンクリートの地面が見えた。奥の角に給水タンクが立っている。意外と面積が広い。こっちのほうが風に当たりやすい。



それから。

風を受けてもびくともせずに寝そべっている、先客がひとり。



だ、誰だろう……。



片うでをまくら代わりにして横になっている。わたしからは背中側しか見えない。紺色のズボンに、黒色のカーディガン。少し乱れたダークブラウンの短髪。上履きに入っているラインは、わたしと同じ、赤色。


2年生の男の子。

……っぽい。



まさか先客がいるとは思わなかった。びっくり、びっくり。


とりあえずはしごをのぼりきった。よいこらせ、とおっさんじみたかけ声つきで、給水タンクエリアに足をつけた。