きみのひだまりになりたい




「うわさが流れてても、今日も変わらず屋上でごはん食べるんでしょ?」


「うん! もちろん! 実はね、夏休みも会う約束しちゃったんだ」


「まじか!」


「かあいいねぇ」




うわさは、うわさ。わたし自身はこれまでどおりわたしらしくいる。うわさなんぞに左右されてたまるか!


でも、とつぶやき、ひよりんはわたしの机にひじをついた。いじらしくへそを曲げている。




「……たまにはあたしともごはん食べてね。さびしいよ」


「だから言ってるじゃん。ひよりんも一緒に食べようよって」


「あたしと、まひるんと、木本朱里で? 何その謎メン。やーだー。だったら朝也に英語教わりながら食べたほうがまし!」


「は、やだよ。昼休みまで勉強したくねぇ」


「えー! 朝也にもフラれたー!」


「今月の昼休みはほとんど部活のミーティングで埋まってっし」


「地区大会、近いもんね」




季節が夏になった。ということは、高校野球の大会が差し迫っているということだ。

あの有名な甲子園まで1か月を切った。朝と放課後の練習メニューが激しくなり、休日は練習試合が多くなると聞いた。野球部の本気度がわかる。


リュックにぶら下がる、手作りのお守りがみっつ。チャックの出発点から覗く、グローブとシューズについた傷。爽やかな柔軟剤に押し負けた汗のにおい。その頭をきれいに刈ったときも、きっと情熱を懸けていた。



この熱から逃げるのは、さぞ骨が折れることだろう。

きみも、難儀だね。




「そういえば、練習試合はどうだったの?」


「勝った!?」




土曜日の試合のために、金曜日の放課後に体を張ってボールを追いかけていたね。実はこっそり見ていたんだよ。

わたしも、木本くんも。

日に日に小野寺くんの肌が浅黒くなり、手のまめが育っていることを知っている。