一面青く渇いていた空が、熱をすべて吸収したようにたそがれた。


ずいぶんとうすまった群青が、だんだんと夕日に侵食されていく。奥にいけばいくほど、オレンジジュースよりもよっぽど濃い橙色が焦がれている。あれはもう、赤だ。日に焼けた、きれいな赤。白かった雲でさえ赤らんでいる。



どんな色も似合っちゃうなんて、空は本物の美人さんだなあ。



そんなばかげたことを思いながら、石畳の階段をゆっくりのぼった。


階段のてっぺんには東屋がある。屋上から展望できた小山の中にひっそりと建つあの場所は、わたしの秘密基地。わたし以外はめったに人が来ない。放課後になるとここに立ち寄るのが、わたしの日課になっている。


生い茂った木々の葉に囲まれた、木製の東屋。何十年、へたしたら何百年も前に造られたんじゃないかと疑うくらい、すごくぼろい。建付けのわるい柱に、座るたびに歪むベンチ。真ん中に設けてある小さな丸テーブルは、ところどころ材木が腐っている。


屋根も例にもれず古びている。




「……ほんと、きれい」




見上げれば空の色が覗く。ただでさえ木と木の隙間から日が差し込み、雨の日は特に屋根の意味を果たさないにもかかわらず、大小さまざまな穴まで開いてしまっている。

おかげで電灯には困らないが、雨が降ったときは散々な目に遭う。ここでは屋根はただの飾りでしかないのだ。