――ガコンッ。



3段目のボタンを押すと、ひざ下にある受け口にお目当ての物が落ちてくる。受け口の底に手を突っ込んで、ひんやりとした感触ごとつかみ取った。


白と橙色の長方形。
手のひらサイズの紙パック。


『オレンジ100%』


真ん中にでかでかと主張のある面の裏からストローを抜きとる。ストローの先端を小さな銀色の円に突き刺し、ストローをくわえて吸い込んだ。




「ん、おいし」




AM 8:20。


まだ朝のショートホームルームも始まっていない時間。人のまばらな廊下を歩き、2-6の教室のななめ前で足を止める。窓を開けると涼しい風が吹き抜けた。



今日はいいお天気だなあ。

真っ青な空。白い雲。
絵に描いたような晴天、ってこういうことを言うのかな。



窓枠にひじを乗せ、青空を眺めながらストローをオレンジ色に染めた。朝からたまってしまった疲れを、冷たい飲み物でいやしていく。


やっぱり飲むならコレだね。
オレンジジュース。


味覚をつんと刺激する酸っぱさ。そのあとに爽やかな甘さが口いっぱいに広がる。ごくりとのどの奥に流し込んだ。心臓の上あたりが冷えていく。


ずずっと吸い込みすぎて、紙パックがベコッとつぶれた。