二階堂先生とは夏祭り以来の対面だ。暑中見舞いのハガキは送ったものの、健康状態についてはこうして直接会わないとなかなか把握できない。重症で倒れたところに立ち会ったこともあり、なおさら心配してくれていたんだろう。


もしかして……校門前にいたのは、それで?

……いいや、ちがうな。二階堂先生は生活指導担当として、毎日校門前であいさつしながら風紀チェックをしていた。普段厳しい人にやさしくされると、フィルターがかかりそうになることあるよね。あれ、わたしだけ?




「元気ならそれでいい。遅刻する前に教室に行きなさい」


「え……。い、いいんですか? 身だしなみがどうの言わなくて」


「なんだ、言ってほしいのか?」


「ち、ちがいます!」


「冗談だ」


「……に、二階堂先生も冗談とか言うんですね。意外です」


「田中はわたしをなんだと思っているんだ」


「……堅物教師?」


「ほーう?」




はっ。やば。口がすべった。

あわてて口を両手で覆い隠しても、ときすでに遅し。二階堂先生は右の眉毛と口角をぴくりと持ち上げ、眼光をすぼめている。自ら進んで雷を落とされに行くバカがどこにいるんだ。はい、ここです。


しまったー! やっちまったー! わたしとしたことがー! だってうそつけませんし! 正直さが取り柄なもので! つい! 悪口のつもりじゃなかったんです!

びっくりマークの多さからも、わたしのあわてっぷりが読み取れると思う。夏休み気分と寝不足と体質がたたっている。堅物教師を上回る、インパクト大なほめ言葉はないだろうか。急募。