きみのひだまりになりたい



自分にうそはつかない。
ルールに反さない程度に、自分らしく。


そのせいで傷ついてもいい。自分の気持ちを押し通してできた傷より、押し殺してできた傷のほうがよっぽど痛い。




「難儀な生き方してんのな」




眉間をきゅっとさせて、吐き捨てられた。言い方は投げやりだったのに、なぜか感傷めいて聞こえる。同情とは似て非なるものをなんとなく感じ取れた。


難儀。
うん、そうかも。


生きることすら簡単ではないのに

正直に生きるのは、ひどく、難しい。



なっとくして苦笑したわたしに、先客の男の子は何も言わずに、日差しを拒むようにまつ毛を伏せた。上まつ毛と下まつ毛の影が重なる。わたしと目が合わなくなった。


でも。
でもね。


難儀な生き方をしてるのはわたしだけじゃない。


そうでしょう?




「先生の言うことに従ってないのは、きみも同じでしょ?木本 朱里(キモト シュリ)くん」


「……なんで、知って……」




また、きれいな瞳と交わった。



先客の男の子

――2-1の木本くん。



名前を知ったのは、よくあるうわさ。

実は、何度か廊下ですれちがったことがある。入学したてのころ、近くにいた女子たちがきゃっきゃと騒いでいたのを聞いた。こんな美形が学校にいたら、うわさにならないはずがない。



ゆるやかに唇で弧を描けば、木本くんは情報源を察して「はああ〜〜」と大きく息を吐いた。