「不良じゃないんだけどなあ……」
「毎日先生に叱られてんだろ?」
「叱られ……。あれはそういうんじゃなくて、意見の相違というか……。そ、そもそも、叱られてるだけだったら不良って呼ばなくない?」
二階堂先生との意見の対立がうわさの原因なら、わたしは全力で異論を唱える。
先生とは考え方がちがうだけ。ちょこっと相性がわるいだけなんだ。おかげで毎日ああだこうだ注意されているけれど、それが不良かどうかにつながるかは別の問題である。
わたしは不良じゃない。
真面目な高校生だ。
「先生に歯向かってるように見えんじゃねぇの?」
知らんけど。そう最後に付け足された。テキトーすぎる。
早くも緊張感のなくなってきた会話のテンポと空気感に、先客の男の子は警戒心を解いていく。興味がうすれてきているのが一目瞭然だ。引き締められていた表情筋が、だんだんゆるんでいっているのがその証拠。
下まつ毛の長い、黒い瞳。高い鼻。きりっとした眉。形のいいうすい唇。それらがきれいに配置された、小さな顔。
いわゆる美形というやつ。
その顔が多少ゆるもうが、しかめられようが、どっちみちきれいなのは変わらない。ゆるんでもなお、険しさが残っているとしても。やっぱり、きれいだ。初めて間近で観察するが、「男前」と言うよりも「きれい」が一番しっくりくる。



