ちゅるるとストローを吸った。汗ばむ体に、ひんやりとした甘酸っぱさがよくしみる。100点のおいしさ。ひとりなのが、ちょっと、物寂しいだけ。


地面の影絵を眺めた。屋根の切れ目から、まるでレースカーテンのように木漏れ日が注がれる。あったかくて、切なくて、たやすく焦げてしまう。



足元を包んでいたひだまりが、ふと、陰りを帯びた。

影法師に覆われたのだ。反射的にストローから口を離した。鮮やかな光が透けていく。心臓がきゅうと縮こまった。



『オレンジ100%』



いちばんに見つけた、おそろいの紙パック。結露した水滴がぽたりと垂れる。あの夜の雨と似ていたし、わたしの代わりに泣いてくれたんだとも思った。


さらに伸びたダークブラウンの前髪の奥で、まあるくなった黒い瞳。石畳の階段のてっぺんで立ち尽くす彼に、たまらずほほえみかけた。


待ちくたびれたよ。




「待ってたよ、木本くん」


「……っ、そ、それは、おれのセリフだバカヤロー」




ええ? なあにそれ?
こればっかりはゆずれないなあ。わたしのほうが待ってたよ。ずっと。ぜったい。


まったくもう、と呆れ笑いすると、木本くんはズンズンと迫り来る。怖い形相をしている。わたしのほっぺをむにっと両サイドからはさみこまれた。


この仕打ちは何なんだ。もしかして、お仕置き? 新手のいやがらせ? ……身に覚えがありすぎる。


木本くんの頭が近づいてきた。頭突きか!?と内心びくびくしていたら、こつん、とおでこに木本くんのそれがくっついた。思いのほか衝撃が軽くて、ちがう意味でびっくりした。