きっともう好きじゃない。



爪がすり減っちゃうんじゃないかってくらい、ずっとまおちゃんに摩られて、だんだんと居心地が悪くなってくる。

正直、彼女のことが頭をちらつくし、隣にはボーナスステージをクリアしてご満悦な薫がいる。

だけど、正面ならまだしも背中にいるまおちゃんを突き放すのは難しい。


あんまり自分から接触したくないけど、仕方なくまおちゃんの魔の手に捕まっていない左手で囚われの右手の救出を試みる。

大人しくしているように見せて、一気に剥がしにかかるけど、まおちゃんの反応もやたらとはやくて、指の隙間にまおちゃんの指が埋まる。

えっ、と声を上げる間もなく手の甲から指先まで包み込まれて、助けに来たはずの左手が行き場をなくした。


「他所でやれ、おまえら」


わたしが奮闘しているわずかな時間でさっさとゲームを切り上げた薫が、ソファに片膝を立て、その上に手を乗っけて、さらに顎を乗せた姿勢でじっとりとわたしとまおちゃんを見る。

視線はまおちゃんに向いているみたいで、どことなく険しい表情。

まおちゃんはどんな顔してるのか見ようとしたけど、わたしの頭のてっぺんに顎を置くから、確認できなかった。


「姉ちゃん取られて寂しいんだってさ」


「え、そうなの? ごめんね」


顎が刺さって頭頂部は痛いんだけど、耳からは離れた声にほっとしながら、まおちゃんに立ち向かえなかった左手を薫にあげる。

差し出されたわたしの手を薫の目が追いかけた。


ほら、遠慮しないで。

上下に軽く手を揺すると、薫がすっと目を細める。


これ、もしかして怒るかな。

やりすぎた?

寂しそうっていうのも、まおちゃんのことだからホラ吹いたのかも。


まおちゃんに握られている方の手は指の合間が湿ってきてるような気がする。

わたしの汗だ。まおちゃんの手はしっとりともしてない。