まおちゃんがお母さんの手伝いをしている間、わたしは薫に付き合ってテレビゲームのコントローラーを握っていた。
「イッテ。くそ、は?」
「別にかおる痛くないじゃん」
ゲームしてるときの薫ってめちゃくちゃ口が悪い。
何か口を出そうものならきっつい目で睨まれる。
わたしの役目は薫の後ろをついて行くだけ。
薫が拾いそびれたアイテムの回収とか雑魚敵の相手だとか、ぜーんぶ任されてる。
全然面白くないけど、適当にやって薫のキャラクターの背中に斬りつけたりしたら、たぶん次は舌打ちが飛んでくる。
前に間違えて横っ腹をぶん殴ったら濁点がつきそうなほど重い舌打ちを落とされた。
無心で薫の操作キャラクターを追いかけていると、先に次ステージへのスイッチを踏んだらしく、突然周りの景色が変わった。
見た目だけは派手な、弱点のわかりやすいボスとの戦闘が始まってすぐにわたしは画面の端に移動する。
全画面を薫に譲って、コントローラーも膝の上に放り出す。
ここまで来たら薫の独壇場だ。
ずっとうるさくしていたくせに、ここにきて黙りこくってしまう。
手元には目もくれず、ついでに瞬きもしない薫の横顔を眺める。
そうやって、ぼうっとしていたのが悪かった。
「やっべ、姉ちゃん助けて」
「え!? む、無理だよ」
手放していたコントローラーをとっさに握るだけの判断はできたけど、いつも薫に押し付けられる雑魚敵とはわけが違う。
剣を振り回していたって当たらないし、かといって下手に接近したら即ゲームオーバー。
焦ったわたしが取った行動は、きっと最善だった。



