眠る寸前までちょっと現実的じゃないまおちゃんへの連絡通路のことを考えていたせいで、夢に見た。

まおちゃんはたぶん詰まっちゃうけど、わたしからなら通れそうな大きさのパイプを薫の部屋を突っ切って伸ばしてた。

通路の途中に小窓があって、薫の様子が覗けるようになっていて、心底嫌そうな顔をした薫と目が合ったところで目が覚めたから、まおちゃんの部屋にはたどり着けないまま。


昼寝にしては長く眠っていたみたいで、時計の針は5時前を指している。

眠る前より随分と軽く楽になった体を起こして部屋を出ると、薫の部屋のドアが全開になっていた。


「かおる?」


物はわたしよりも少ないのに散らかり放題な部屋を覗くと、押し入れから薫のお尻がはみ出してる。


「何してるの?」


頭ごと突っ込むって、不可解すぎない?

いっそお尻蹴っ飛ばして押し入れの戸を閉めてやっても面白いかな。

しないけど。怒られるし、仕返しこわいし。


「姉ちゃん、彫刻刀持ってない?」


「ない」


「だよなあ……」


技術の授業で使うんだろうけど、残念ながらわたしは持っていない。

持ってるわけがない、だって。


「かおるの彫刻刀、わたしのじゃん」


もともと、お下がりで薫も使うってわかってたから、シンプルな青いデザインなやつを選んだ。

共有のものは薫がすぐに失くすからわたしが持っているんだけど、彫刻刀はもう使わないからって薫に渡していたのに。


「明日買いに行くか」


「いや、探しなよ。どっかあるでしょ」


「もういい」


すぽんって音が聞こえてきそうなくらい勢いよく押し入れから出てきた薫がドアの前から部屋を覗く私を見て、思いっきり眉を寄せる。


「なに開けてんの?」


「開いてたんだよ」


って、言ってもたぶん信じないんだろうな。

文句言われる前に退散を決めて、リビングに向かう。