海は砂浜に下りる時と車で走るだけの時があるけど、展望台では毎回車を下りて柵の近くまで行く。
夜景の方が綺麗なんだけど、夜に来る時はお父さんが運転というのも決まり事のひとつだった。
さっき通った海沿いのカーブを端から端まで見渡せる。
お母さんは運転中に着信が入っていたらしく、向こうで話し中。
学ラン姿の薫が隣にいることってあんまりないから、何か変な気分だ。
入学したての頃はダボダボで余りに余っていた裾や袖がたったの1年でぴったりになるんだから、男の子の成長ってこわい。
この調子だと、卒業する頃にはつんつるてんになるんじゃないかな。
そういえば、まおちゃんも卒業式のあとに家に来たとき、やたらとズボンの裾が短かった。
「なんだよ」
ついジロジロと眺めてしまっていて、ぐっと眉を寄せた薫がわたしから一歩遠ざかる。
そうやってすぐに眉間に皺を寄せるようになったのって、いつからだっけ。
「背、伸びたなあって」
「そんだけ?」
「うん。毎日一緒にいるのに、いつの間にか大きくなってるんだもん」
同じ家にいて、顔を合わさない日なんてないのに、ふと改めて見てみると背丈だけじゃなくて、丸っこかった顎から耳へのラインがシュッとしてる。
また1年後、もしかしたら今後はもっとはやいスピードで変化していくのかもしれない。
まおちゃんの時は、そんな変化を追いかける時間が限られていたから、薫のはちゃんと見守りたい。



