きっともう好きじゃない。



エレベーターは真反対にあるけど、待つよりはこっち側にある階段を使う方がはやくて、買い物を終えた人の波が雪崩てくる。

邪魔にならないように端っこに寄って、スマホを触るでもなくぼうっと天井からぶら下がる販促のポップを眺めていたときだった。


「あれ、和華?」


ちょうど隣を通り過ぎていくところだった女子の三人組が足を止める。

他所を見ていたこともあって、人が通るのはわかっていたけど、誰かなんてわからなかった。

声にびくりと肩を跳ねさせて顔を向けると、3人が揃って壁際に迫ってくる。

それは、わたしを追い詰めようとかいう他意なんかなくて、ただ通行の邪魔にならないように、だと思うんだけど、その行動はわたしにとってトラウマの引き金になってしまっていて。


「っ……」


わたしを囲うように、正面と左右に立つ3人から顔を背けて体を縮こまらせる。


「なに? あんたまだ気にしてんの? あのときのこと」


声が右から聞こえた。


「うそ、もう卒業して1年経つのに?」


今度は、左から。


「あんなの和華が気にしすぎてただけだって。そういう態度、もうやめない?」


最後は正面からぶつけられて、もうどこにも逃げ場がなかった。


3人が3人とも、わたしに問いかけるようなことを言った。

だから、何か答えなきゃいけなくて、だけどもうほとんど言われたことを覚えていない。


「ごめん、ね」


真ん中の子と右側の子の間に彷徨わせていた視線を自分の靴のつま先に落として、小さく震える声で言う。