巫女はブツブツ言いながら麦酒を煽っていたがあっと何か思い出したかの様に目を見開いた。

「あっそうそう。
この前あんたを見かけた時に面白い物を見たからあんたに話したかったのよ。
すっかり忘れてたわ。」

「面白い物?」

「そっ。
あんたの可能性のあった別の未来。」

巫女が思い出したのかふふっと笑う。

「そんなに面白かったんですか?」

「まあね。
意味が分からなさ過ぎて面白かったわよ。」

「どんな内容だったんだい?」

「陛下の見合いをサイコパスがすっぽかしたパターンの未来だったの。」

「へー何か有り得そうで面白いな!」

「実際私ギリギリまですっぽかそうと思ってましたし。」

「キャロル妃そんな事考えてたのか?」

「あの日は本気で仕事が間に合わなさそうだったので。
ただ王命に逆らうのはという葛藤に負けましたけど。」

「負けてくれて良かったよ本当に。」

よしよしとルシウスがキャロルの頭を撫でる。

キャロルは煩わし気にルシウスを睨むがルシウスは動じない。

その光景を見て彩花嬢がクスクスと笑う。

「なんか見合いをすっぽかした方がキャロルさんらしいって思えちゃうもんね。
それでそれで?
どんな内容だったの?
ルシウス君とキャロルさんの出会いイベがなくなったって事でしょ?」

「イベント扱いはどうかと思いますよ聖女様。
まあそうなんです。
見合いで2人が出会う事なく進む未来の話です。」

「何かキャロルだとその後も陛下に出会わず進みそうな気もするけどな。」

「いえ、出会うんですよそれが。
縁ってやつなんでしょうね。」

「えっまじで?
どうやって出会うのか全く想像つかねえな…。」

レオンが首を傾げると巫女がニヤリと悪い笑みを浮かべた。

「想像できないでしょう?
聞いてくれますか?」

そう言って巫女は有り得たかもしれない未来について語りだしたのだった。