「……ねえ、うさぎちゃん」

唇を離したそらくんが、熱っぽい視線を私に向けて、口を開いたその時。

「……え」

「ウソでしょ?」

突然、部屋が揺れ始めた。

「これ、もしかしてゲート開いたの?」

「え、でもまだ時間じゃ………」

私は言いながら壁の時計に目をやった。

時計の針は4時ちょうどを指していた。

4時??

もしかして………。

「とりあえずクローゼット見てみる?」

こたつから出てクローゼットを開ける。

そらくんが来た時と同じように、彼の家の廊下がそこにはあった。

そこにそらくんが手を差し出すと、手は何にも弾かれることなく、すっと前に伸びた。

「あー、やっぱゲート開いちゃったっぽいねー」

「そっか……。じゃあ、そらくん、帰んないとだね」

「うん……。ま、明日も来るからさ」

そらくんは「おやすみ」と言いながら私の頬に軽くキスをして、ゲートの中に入って行った。

廊下に立ったそらくんは、ひらひらと笑って手を振った。

私も笑って振り返す。

そしてクローゼットをそっと閉じた。


きっと、そらくんには明日も会える。

たぶん、あさっても。

だけど──。

最初の4日間は、朝6時にゲートが開いていた。

でも昨日は5時、今日は4時だ。

ということは、おそらく明日は3時で、あさっては2時なんだろう。

あさってが2時だとしたら、しあさっては??

1時に1回目のゲートが開くのに、2回目も1時ということは……。

しあさって、ゲートはきっと開かない。

理由も理屈もよくはわからないけど、たぶん、開かない気がする。

つまり、ゲートを通じてそらくんと会えるのは、明日とあさっての2日だけだ。

それも、明日は2時間、あさっては……たった1時間だ。