「え? 」
きょんとした目で、楓子は颯を見つめた。
「だってさ、お試しなんかじゃなく本気で受け入れてくれって言ったから。何にも考えていなかったんだ」
「・・・そうだったのですか・・・」
俯てしまう楓子を、颯はそっと抱きしめた。
「楓子、結婚しよう」
「・・・子供が、できてしまったからですか? 」
「違う! 俺は、ずっとお前と結婚するつもりで交際申し込んでた。養子になっても構わないから」
「本当に? 私でいいんですか? 」
「何言ってるんだ? お前、最高だぜ。刑事だったのはびっくりしたが、お前の礼儀正しい言葉遣い聞いていたら納得できた。検察局と警察局は隣同士だからな。検察局に務めているって思われても、おかしくないよ。どちらにしたって、お前はすごい人間だ。誰もに文句は言わせない」
嬉しくて、楓子の目が潤んできた。
「有難うございます。・・・ずっと、悩んでいました。・・・どうしようって」
「どうしようって、まさかお前。せっかく来てくれた子を、勝手におろすつもりだったのか? 」
「いいえ。1人で産もうかと考えていたのです」
「それはないだろう? 俺にだって、責任はあるんだから。もう、何でも1人で背負う事はやめろ。これからは、俺もついているんだ」
「はい・・・」
颯はそっと、楓子のお腹に手を触れた。
「ここに赤ちゃんがいるのか。今どのくらいなんだ? 」
「まだ6週目に入ったばかりです」
「そうか。じゃあ、もう刑事の仕事は辞めるんだ。何かあったら大変だ」
「はい、そうします」
素直に答える楓子はとても可愛い。
颯はますます楓子が好きになった。



