手際よく料理を作ってくれる颯の姿を見ていると、楓子はとても安心感を抱いた。


 ずっと1人でも平気だったのは、目的があったから・・・

 
 目的を果たした今は1人なんだと実感させられていた。


 でも家に誰かがいる事は、こんなにも安心できる事なんだ。


 颯の背中を見ながら、楓子はそう思った。




 しばらくして。


 颯が作ってくれたのは、シンプルなお粥だった。


 久しぶりに、ちゃんとしたご飯を食べた楓子は少しだけ顔色が良くなった。



「ありがとうございます・・・。こんなに美味しもの・・・久しぶりです・・・」

「そう言ってもらえると、嬉しいよ」


 楓子は疾風を見つめた。


「ん? どうかしたのか? 」

「あ・・・あの・・・」


 何かを言いたそうな楓子。

 だが、上手く言葉が出てこないようだ。


「どうしたんだ? 」

「いえ・・・。実は・・・・」


 言いたいのに、なかなか声にならない楓子は、ぎゅっと唇を噛んだ。

「どうしたんだよ」

 
「・・・謝らなくてはいけない事が・・・」

「謝る? 何を? 」


 楓子はそっとお腹に手を当てた。


 その姿を見て、颯は、まさか・・・と思った。

「申し訳ございません。・・・赤ちゃんを・・・授かってしまって・・・」

 
 今にも泣きそうな顔をして、楓子はぎゅっと唇を噛んだ。


「本当か? 」

「はい・・・。本当に、申し訳ございません。・・・」


「何故謝るんだ? 」

「・・・だって・・・ちゃんと、避妊してくれていたのですよね? 」


 颯は思い返した。

 確かに初めての夜は、ずっと準備していた避妊具をちゃんと使った。


 だが・・・

 2回目のあのホテルの時は・・・


「あ、ごめん。2回目のホテルの時、避妊するの忘れてた」