え? と、戸惑う冬子をよそに、颯は手を引いて連れて行った。
残されたなおは、驚くばかりで呆然としたまま2人が去り行く姿を見ていた。
冬子を連れて、颯は止めていた車へとやって来て、そのまま冬子を車に乗せて走り出した。
冬子は黙って俯いている。
颯は特に無理な会話をすることなく車を走らせた。
疾風が向かったのはホテル街。
少し高そうなホテルに車を止めると、冬子を降ろした。
「こんな所に連れてきて、ごめん。誤解された場所だから、ここで誤解を解きたいって思ったんだ」
「・・・私・・・誤解なんて・・・」
俯いてしまったそっと冬子の手を取ると、颯はそのまま中へ連れて行った。
広々とした感じの良い部屋に、大きなダブルベッドが置いてある。
颯はソファーに荷物を置くと冬子を見つめた。
どうしたら良いのか分からず、冬子は佇んで俯いていた。
ゆっくりと颯が近づいてくる・・・。
冬子はドキドキと鼓動が高鳴り、どうしたら良いのか分からず唇を噛んで俯いている。
「冬子・・・ごめんな・・・」
とても優しい声をかけると、颯はそっと冬子を抱きしめた。
「試しでいいからなんて、酷いこと言ってごめん・・・」
「どうして謝るのですか? 私もそれでいいと・・・言ったじゃないですか・・・」
「そうじゃないんだ。俺は、ずっとお前の事が好きで忘れられなかった。同窓会で再会したときは、本当に嬉しくて。やっと会えたって思った。だけど、お前は逃げてしまう。高校の時と同じ事は、繰り返したくなかった。だから、試しでいいからってつい言ってしまったんだ。本当は、本気で付き合ってほしかった」
冬子は恐る恐る、颯を見上げた。
目と目が合うと、颯はそっと微笑んでくれた。
その微笑みが、何故か冬子の胸をとても暖かくしてくれる。