お試しから始まる恋


「覚えているようね。ねぇ、貴女は柳田さんと付き合っているの? 」

「あ、いえ・・・」



 うん、付き合っていない。

 だってお試しだから、あの夜の事も。

 冬子は自分にそう言い聞かせた。


「そっか、付き合ってないのね。この前、ここで貴女と柳田君が抱き合っている所みちゃったから。てっきり付き合っているんだって、思ったのよね」

「誤解です・・・。そんな事は、ありません・・・」

 ふーんと、なおは冬子を見た。

「まぁ、それはありえないって私も思うから。でも変な話聞いたのよ」

 フン! と鼻で笑いを浮かべるなお。


「早杉さんは、もう死んでいるって言っている人がいたんだけど・・・。あれなんなの? 」
 
「それは、私が聞きたいです。どうゆう理由で、そんな事を言っているんでしょうか? 」

「さぁ。ただ、早杉さんが高校2年の時。1ヶ月休んだことがあったでしょう? その後、なんだか以前と違うって言っていた人がいたのよね。病気してたからじゃないかって、言われて納得してたけどね」

「そうですか・・・」


「ねぇ、早杉さんは検察局に働いているのよね? 」

「えっ・・・あ、はい・・・」


 一瞬ドキッとした冬子だったが、冷静を装って返事をした。


「じゃあ、私の彼と同じね。私の彼も、検察局で働いているの。最も、彼は検察官だけどね」

「そうですか。それは立派な方なんですね」


 冬子の受け答えに、なおはどこか変な様子を感じた。

「・・・私、彼とは上手く行ってなくて。近いうちに別れようと思っているの。それでね、この前は柳田君に相談に乗ってもらってたのだけど。彼の事を話したら、別れたら付き合っても良いって言ってくれたわ」

「そうなんですか。良かったですね」


 あっさりと答える冬子に、なおは苛立ちを感じ挑発的な目をした。


「早杉さんがそう言うなら、柳田君にも、早杉さんが是非付き合って欲しいって言ってたと伝えるわね」

「はい・・・分かりました・・・」


 少し伏し目で答える冬子だが、どこか傷ついた目をしていた・・・。