夕暮れの中、私は一人買い出しに出かけてい

た。

シェアハウスに暮らしている私は、今日料理

担当だったのだ。

スーパーに着き扉が開くと、クーラーの涼しい

空気に包まれる。

ゆっくり深呼吸した後、私はカゴを持ちとり

あえず一通り店内を歩いてみた。
 
私の好きな…、いや気になる人、陵(りょう)

さんは仕事が忙しそうだから、早く食べれて食

べやすいものを作ってあげた方がいいよね…?

でも、実際陵さん、どんなのが好きなのかな。

一度は好きなものを作ってあげたら、喜ぶか

な…。

「…………、って何考えてるの!?私は…!」

大きな声が、スーパーに響き渡る。

顔を真っ赤にした私は、謝りながらお辞儀を

し買い物に専念した。

「ふぅ…、とりあえずこんなものかな!」

買い物を終え、食材が袋いっぱいに詰まった

物をいざ持ち上げるとかなり重かった。

「お…重い…。」

私は、よろけながらも必死に歩いていた。

すると、荷物が突然軽くなり、横を見ると陵

さんが荷物を持っていた。

「ん、重いんだろ?持ってやるよ。」

そう言い、手を前に差し出してきた。

「な…、なんでここにいるんですか…!?」

私は驚いた顔をし、一瞬夢かと思い固まって

しまった。

「たまたま通りかかったんだよ…。」

そして、私がもう片方に持ってる荷物を、陵

さんは軽々と持ち歩きだした。

「そんな…、今日は私の当番なのに…!」

「女の子なんだから、無理するなよな。」

女の子……。

私は、その言葉に少しは意識されてるのかな

っと思い嬉しかった。

「……、何嬉しそうな顔してるんだよ…桃。」

「なっ…!そんな事思ってな……、!」

その瞬間、陵さんも少し微笑んでいた。

無邪気で、優しいその笑顔に私は顔が熱くな

る。

夕焼けに照らされ、陵さんと二人っきりで歩

くその道は、いつもより長く感じた。

一秒一秒ごと、心臓がドキドキいってるのが

分かる。  

私は、顔を少し背けながら足を一歩ずつ前へ

出し歩き続けた。

だって、今顔を合わせたら……。

「好き」って気持ちが伝わってしまうかもし

れないから…。

この気持ちは閉まっておかなきゃ…。

今の関係を壊したくない。

高校生の私に「好き」なんて言われたら、陵

さんはきっと困るでしょ…?






『残り30センチを縮めたくても縮められな

い』

この意味、貴方なら分かりますか?