「……すごいね、拓海は」 「なんだよ急に」 同時に席に着いたタイミングで、ポツリと言葉が出た。 だって、あんなとっさな対応までできちゃってさ。 「私には無理かも」 「……まぁ、慣れだよな」 うーん、と首の後ろに手を当てて拓海は言う。 「言ったろ?俺たちは不毛なんだよ。あんなのでいちいち傷ついてたら身が持たない」 そう言う拓海はきっと、私よりも傷ついてきたんだろう。 だからこそ、ああいう逃げ方を知ってるんだ。