杏は、いつも自分の口でちゃんと言葉を伝える人だ。 いま謝ったのも、……高野への想いを伝えるときも、こいつは悩みながらも最後にはちゃんと"自分"を貫く。 そんな杏が眩しかった。 俺は、自分の気持ちを伝えるなんてことをしたことがなかったから。 覚悟を決めているはずなのに、さっきから心臓がドクンドクンと音を立てている。 情けないくらい、緊張してる。 「……拓海?」 キュッと口を強く結んだ俺に気がついたのか、杏は不安そうに俺の顔を覗き込んだ。